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2026年6月9日火曜日

「SNSリテラシーと子どもの性」講演

 


都内オフィスのスタジオから、オンライン講演を務めた。
テーマは「SNSリテラシーと子どもの性」。
全国の行政・医療・教育関係者の方々、約300人が対象。

こちらは一般社団法人 日本家族計画協会が主催する「思春期保健セミナー」の一環。
「JFPA 思春期保健相談士Ⓡ」の養成も兼ねており、私もかねて担当させて頂いている。

リベンジポルノや性情報リテラシー®︎に加え、今年は新たなトピックとして、性的広告やAI創作物と児童ポルノ禁止法をめぐる問題をお話した。

性的広告のゾーニングや自主規制だけでは、子どもを守れない理由を解説している。

お世話になった皆さま、ありがとうございました!

<参考>
【性的広告】研究発表&勉強会 

 



渡辺真由子の講演
 
渡辺真由子 公式サイト

http://www.mayumedia.com/


 

2025年4月8日火曜日

フジテレビ第三者委報告書にみる「メディアと性暴力」

 

フジテレビと親会社フジ・メディア・ホールディングスが設置した第三者委員会の調査報告書が、3月31日に公表されてから1週間。

フジテレビ社員である女性アナウンサーが、タレントの中居正広氏から「業務の延長線上の性暴力」を受けたことが認定されたほか、フジテレビ側の「性暴力を助長する社内環境」も微細に暴かれ、前代未聞の内容となった。

ここでは取り急ぎ、メディアと人権を専門とし、かつ元テレビ局社員である立場から、私が気になった報告書のポイントを列挙しておく。
(肩書は当時)


【「性的同意」の誤解とメディアの性情報】

・フジテレビ幹部らは被害者救済の初動が遅れた理由として、「女性が同意して中居氏宅へ行った」ためプライベート案件と即断したとする。中居氏も本件の背景として、「2人だけになるのを女性が承諾してマンションに来た」と主張。性的同意への誤解は、かくも罪深い事態を生み出す。

・「なぜ自宅に行ってしまったのだろうか」と被害者を責める発言すら、港社長ら幹部から飛び出した(報告書p.39)。幹部らが若かった頃というのは、下記に示すような性的メディアが、恋愛マニュアルを盛んに発信し始めた時代。「家に行けば同意」とのメディアの性情報の影響があったかと思われる。

 

【「女性のモノ化」という価値観】

日枝氏や部下がフジテレビで勢いに乗った1960〜80年代は、グラビア週刊誌やAVが隆盛を始めた時期と重なる。それらのメディアから発せられていた「女性のモノ化」という価値観をそのまま吸収し、増幅させたのが、同局による女性の裸を見せる番組であり、ひいては上納文化ではないか。
*参照:
「メディアの性情報と性情報リテラシー® ~この10年で変わったこと、変わらないこと~」現代性教育研究ジャーナル』No.168、日本性教育協会、2025年、p.4

・フジテレビ内にはびこる「モノ化」の価値観については、調査報告書も指摘した:
"社員等を性別・年齢・容姿などを理由として会合に誘う場合、当該社員等の本人の仕事の能力や資質であるとか人格のある個人ということではなく、「そういう性別・年齢・容姿を持つモノ」として誘っている可能性が高い。" (報告書p.183)

 

【アナウンス職へのリスペクトの欠如】

・「女性アナウンサーは常におびえていて、何かあっても言わない人が多い。現在でさえ、女性アナウンサーたちは『コンプラとかに言わないでください』などと言う人もいて、何か主張していると思われたり、会社に迷惑をかけたりしたくないと思う傾向がある。」
「女性アナウンサーは、社内からどう見られるか気にしている。」
(中居氏の性暴力事案をコンプライアンス推進室に報告しなかった理由について、幹部G氏へのヒアリングより:報告書p.32)

→世間からは華やかにみえるアナウンサーだが、社内での地位は決して高くない。一挙手一投足が評価にさらされ、プロデューサーやディレクターほか周囲の人々から "選んでもらって" 仕事を得るというアナ職のありようが、彼女ら彼らを神経過敏にしている。

女性アナウンサーAがスイートルームの会から先に帰らされた時、「ノリが悪いから先に帰らされたのではないか」と感じた(同p.21)というのが象徴的。早く脱出できてよかった、と安心するのではない。性的な発言が出る芸能人との宴席においてすら、アナとして気に入ってもらわねばならないと思い込まされている。

アナウンサーを言葉の専門職としてリスペクトされる地位に引き上げねば、「タダで使えるホステス(ホスト)」かのような取り扱いは再発の懸念が残る。まずは採用および番組起用方針を、若さや容姿より、実力重視へと見直すことが求められよう。


【性暴力を矮小化する思考パターン】

・性被害を受けたフジテレビ女性社員たちは、一様に「大ごとにしたくない」と述べていた。その理由は「セクハラを訴える=メンタルが弱い/面倒くさい奴/仕事ができない奴」と思われるから、と。この思考パターンは加害者側に都合の良いものであり、これを社員に刷り込んできたフジ上層部は悪質。
*セクハラを矮小化する思考パターン(枠組み)の例は、拙著『オトナのメディア・リテラシー』「そもそも、言葉づかいを疑おう」で

 

【ジェンダーのアンコンシャス・バイアス】

・フジテレビの女性役員は2022年までゼロ。2023年から1人。(報告書p.197)

 「女性社員が部長に就任した際、局長から『この部署のお母さんとして』と言われたと聞いた。シャドーワークをたくさんやれ、何でも受け入れろという趣旨だと思うが、令和6年にもなってこんなことを言うのかと思った」(役職員へのヒアリングより:同p.201)


【顧問弁護士との関係性】

中居氏の件とは別に明らかになった、フジテレビの「重要な社内ハラスメント事案」。男性社員が女性社員に対し、暴行や不同意わいせつ行為を行ったとされるもの。この男性社員への処分について、同局の顧問弁護士は「刑法に違反する事案に該当し得るものの、汲むべき事情があることも考慮して審議されたい」旨を意見した。(報告書p.162)

→この男性社員は、暴行や不同意わいせつ行為を行ったことを認めていない。顧問弁護士が主張した「汲むべき事情」とは、"本件において対象者が、暴行や不同意わいせつ行為を行ったことは認めないものの、自らの行動に問題があったことを認め、また反省を示していること" であった。(同上)

一方、第三者委員会は、"当委員会としては、本件に関してセクハラ行為も、これに伴う暴力行為も、いずれも優に認定し得ると判断しており、かつ、その行為態様は、本来であれば刑事責任を問われかねない、極めて悪質なものであった" と指摘している。(同p.164)

 

総 括

フジテレビをめぐる第三者委員会調査報告書の内容は、「再生」や「信頼回復」のかけ声が虚しく聞こえるレベルである。性暴力のきっかけを作る社員に加え、セクハラ加害をする社員を多数抱える組織が、果たして今後も存続できるのか。

仮に存続しようとするのであれば、まずは性暴力を助長する社内環境を支えてきた幹部を、一掃しなければならない。そして残った役職員に対しては、徹底した人権研修が必要になるだろう。







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2025年3月21日金曜日

性教育政策とメディア・リテラシー(寄稿)

 
『現代性教育研究ジャーナル』(日本性教育協会)3月号の巻頭テーマは「性情報リテラシー®の10年」。
 
「メディアの性情報と性情報リテラシー® ~この10年で変わったこと、変わらないこと~」
と題して寄稿した。

性教育の本質とは、性暴力を防ぎ、誰もが "幸せな性" を享受できるようにするための「人権教育」であると、私は考える。

性暴力を引き起こす要因の一つが、メディアの性情報が伝達する「メッセージや価値観」にあることは、私のこれまでの取材・研究から明らかだ。
 
こうした現状への対策として、性情報に対するメディア・リテラシー、すなわち「性情報リテラシー®」を育む必要がある。
性情報リテラシー® とは、「メディアが発信する “性に関する情報” を鵜呑みにせず、批判的に読み解く能力」と考えてもらえばいい。
 
では、10 年が経過するなかで、メディアの性情報と性情報リテラシー® をめぐり、変わったこと、変わらないことは何だろうか?

性情報については、関連が疑われる性犯罪や性的トラブルが多発したことに加え、AI(人工知能)の発達による新たな問題が噴出した。まさに激変の10 年といえる。
 
本稿は、この10年の主な性犯罪や性的トラブルと、性情報との関連性を読み解いた:
 
2014 札幌小3女児監禁事件
2016 埼玉女子中学生わいせつ事件
2016 ~ 2022 大阪小学生女児10 人性的暴行事件
2021 千葉不動産女性強制性交等致傷事件
2022 滋賀医大生3人強制性交等容疑で逮捕
2023 ジャニーズ性加害問題をイギリスBBC が報道
2023 DJ SODA 氏が音楽フェスで性被害
2023 著名芸人の性加害疑惑報道
2024  著名タレントの性的トラブルとフジテレビ問題
2024 生成AI によるポルノ被害の深刻化
 
 
また、性情報リテラシー® の教育や法整備についても、この10年の動きを整理した。
国レベルでの政策は、遅々として進んでいないことがわかる。
 
ご関心のある方はこちらからご一読を。
 

【参考文献】
「性情報をめぐるデジタル・シティズンシップ教育の展望」The Landscape of Digital Citizenship Education about Sexual Information(『メディア情報リテラシー研究』1(2)、法政大学図書館司書課程、2020年)
 

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2024年7月23日火曜日

【新刊】『子ども白書2024』(SNSの性的トラブルとリテラシー教育)

気づけばあっという間に梅雨が明けてしまったところ、いかがお過ごしでしょうか。

突然だが本日、新刊『子ども白書2024』(日本子どもを守る会編、かもがわ出版)が発売された。

『子ども白書』は、政府機関ではない民間団体が1964年から刊行しているもの。
子どもに関わる最新の諸問題を、教育や司法、文化などの領域から、各専門家が「子どもの権利」保障の視点に立って分析している。

私はメディア領域を担当。
「ネット・SNS時代の性的トラブルとリテラシー教育」
と題して執筆した。

 

思春期の性的トラブルとメディア 

・リベンジポルノ・自画撮り被害の現状 

・SNSリテラシー教育のあり方 

・なぜ撮らせるのか 

・性情報をめぐるトラブルの現状

・性情報リテラシー®教育のあり方

・ネット・SNS時代にふさわしい指導を

……といった内容を解説。

ポイントをコンパクトに凝縮したので、入門編としてもオススメである。

ご関心のあるあなたはどうぞ。



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