2013年9月25日水曜日

ネット・リテラシー教育「受信者編」(新聞寄稿)

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ある有名シェフが先日、インターネット上の口コミ系グルメランキングサイトに関して発言した内容が物議をかもした。自分の店に否定的なコメントが書き込まれたことに対し、「高級店に行き慣れていない庶民にウチの味は判断出来ない」と反論したのである。


 
確かに失礼な言い方だが、騒動は、この種のネット情報の信頼性をめぐる危うさをも問題提起した。味覚には個人差があり、自分の口に合わないとの理由で低評価を付ける客もいる、という可能性だ。昨年には、飲食店がグルメサイトでのランキングを上げるため「サクラ」に金を払い、高評価の口コミを書かせていたこ
とも発覚した。


 何かを調べたい時にまずネットで検索する、という人は多いだろう。だが、ネット空間を漂う無数の情報には、至るところに落とし穴もある。利用者は「ネット・リテラシー」を身に付けておくことが重要だ。


 ネット・リテラシーとは、「ネット上の情報を鵜呑みにせず、自分の頭で判断し活用する能力」である。ネット上では誰もが受信者にも発信者にもなれるこの時代、それぞれに求められる能力を2回に分けて解説していく。
まずはネット情報を受信するにあたり、どのような点に気をつけるべきか。無料かつ匿名で提供される情報は玉石混交だ。全く根拠のない大ウソが書かれている場合すらある。


 
信頼できるサイトを見分けるには、第一に、そのサイトがどんな「目的」で作られたものかを見る。意見を表明するためのブログや、商品やサービスの宣伝をするためのサイトであれば、主観や偏った情報が含まれることが多分にある。また、「この商品がおすすめ」と一見、中立的に紹介するサイトがあるが、そうした記事は、実は広告であることも少なくない。サイトに出資している企業を調べ、記事との関連性を探ってみよう。


 次にチェックするのは、そ
のサイトの「発信者」は誰か。「このサイトについて」というような項目で、自己紹介があるはずだ(なければその時点で信憑性は薄い)。発信しているのは個
人か企業か、あるいは官公庁か。公の機関が作ったサイトであれば、公式情報としての利用価値はある。サイト情報の問い合わせ先が記載されているかにも目を光らせたい。


 一般に信頼度が高いサイトは、新聞やテレビニュースなど、報道機関によるものだ。前述のように報道機関は情報を取捨選択して報じるが、個別の情報には「裏を取って」いる。政府や役所とパイプを持つ立場ならではの強みだ(たまに誤報もあるが)。報道機関のサイトにない情報は、
他の複数のサイトで真偽の度合いを確かめよう。また、「○○調査機関によると」という形でデータが紹介されていたら、出所の機関のサイトをたどり、誇張がないか、より有用なデータはないか確認するといい。


 オンライン百科事典「ウィキペディア」は多くの人が参照するが、専門家のみならず誰でも好き勝手に書き込め、情報の正確性は保証されていない。


 
「ネット=世論」ではないこともポイントだ。ネット上では、情報の転載・拡散が容易かつ急速に行なわれるため、特定の意見(仮にAとする)の数が実態より
も「多数派」に見えやすい。一方、意見Aに反対する人がネットに意見Bを書き込むと、A集団から激しいバッシングを受け炎上する。次第に意見B保持者は主張意欲を失い、ネット上では意見Aが主流として確立される。 


これは「沈黙の螺旋」と呼ばれる構図だ。ネット上に意見Bが見られなくなっ
たからといって、現実に意見B保持者がいなくなったわけではない。自分で情報を探索する特性上、ネットでは「好みの意見」にばかり接しがちだ。視野が狭くならないよう、意識的に多様な意見を入手しよう。


 さあ、初のネット選挙となった今年の参院選。立候補者の見かけ倒しのホームページ、威勢よく中身の伴わない書き込みなどに引きずられなかったか。有権者のネット・リテラシーが試される場は今後も増える。


(熊本日日新聞「論壇」2013.7.21寄稿に加筆)


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