継続審査となった「児童買春・児童ポルノ禁止法」の改正案が、
附則として「児童ポルノに類する漫画やアニメ、CG等と
児童の権利を侵害する行為との関連性」に関する調査研究を推進するよう
盛り込んだことで、賛否両論が沸き起こっている。
「被害児童が実在しない」創作物の性描写をどう扱うかという問題は、
2010年に改正された東京都青少年健全育成条例をめぐっても、大きな議論を呼んだ。
よって御参考までに、
「メディアの性表現と青少年保護」について当時私が新聞に寄稿した内容を
御紹介しよう。
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『問題は作品の発信内容』
小学生の女児が男性教師の下半身に嬉しそうに手を伸ばす。
10代の姉と弟の生々しい近親姦。
少女が全裸で鎖に縛られ、性的な拷問を受ける。
いずれも、成人指定されていない「一般向け」の漫画雑誌に掲載された内容である。カラーページの女児の裸は、第二次性徴前の体つきや肌の色が非常にリアルだ。カバーをかけられることもなく書店に並べられ、子どもも簡単に手に取ることが出来る。
日本性教育協会の調べ(2005)によれば、中高生が男女交際や性交に関する情報を入手する先として、「コミックス・雑誌」は「友人」に次ぎ2番目に多い。親や学校がまともに教えてくれないぶん、漫画は「性の教科書」として重宝されている。
私は昨年、都内の大学生男女を対象に、メディアと性意識・性行動との関連を調査した。ある男子は中学3年のとき、交際する彼女に初体験を迫った。だが彼女は乗り気ではない。結局、強引に性交した。その後、別れを告げられたという。
創作物は「何でもアリ」なだけに、一定の歯止めは必要だ。その作品が生身の人間を登場させるかどうかではなく、どのような「メッセージ」を発信しているかが問題なのである。同時に、学校や家庭において、メディアの性情報を批判的に読み解くリテラシー教育を取り入れることを求めたい。
(毎日新聞『論点』、2010.6.11 掲載)
【参考文献】
『性情報リテラシー』
・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、
自らの性行動・性意識にどう反映させているのか?
・「性的有害情報対策」としての
リテラシー教育はどうあるべきか?
⇒メッセージ&目次
◆【データ編】
『性的有害情報に関する実証的研究の系譜
~従来メディアからネットまで』
情報通信学会誌103号
・性的有害情報が与える影響研究に関して、
海外国内の最新状況を概観(児童ポルノ・創作物含む)
⇒要旨はこちら
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