あるいじめ自殺事件の遺族から先日、私の元に連絡が入った。
「もう、マスコミからの取材に振り回されたくない」
聞けば、インタビューに応じてもマスコミ側の都合でカットされたり、
一部だけが切り取られる形で報じられることが続いたという。
「何かある時だけ取材に来てインタビューをつまみ食いされても、
自分達の考えは伝わらない」と遺族。
この遺族の事件とは、
1998年に福岡県飯塚市で、当時高校2年生の16歳、古賀洵作(しゅんさく)さんが
同級生たちによる恐喝を受けた直後に自殺したもの。
マスコミに大きく報じられ、私もテレビ局報道記者として、
事件発生時から取材を重ねてきた
(参照:「いじめ自殺 親のそれから」・「いじめ自殺報道とメディア・リテラシー」)。
もっとも、遺族にとってマスコミに顔を出すことは、プライバシーの面でリスクもある。
最近ではマスコミからの取材は基本的に断っており、たまに特別に応じると
冒頭のような目に遭ったという。
とはいえ遺族は、
自分の息子が亡くなって15年も経つのに、いまだ相も変わらず
いじめで命を絶つ子どもが頻発する現状に、もどかしさを抱く。
この6月に誕生した「いじめ防止対策推進法」にも、不備があると感じる。
「もっとしっかりしたいじめ対策法の立案に向けて、
ずっと付き合ってきたあなたが私たちの考えを包括的に発信してくれるなら、
協力してもいい」
私は、この申し出をお受けすることを即断した。
というのも、遺族の取材を続けて早15年。
手元には膨大な量の記録がある。
この取材記録をいずれまとめなければ、と思いながらも
忙しさにかまけて延び延びになっていた。
在籍中の博士課程をちょうど今夏で終えることもあり、
これを機に、いじめ問題に腰を据えて取り組まねばらないと
背中を押された気がしたのである。
いじめ自殺事件の遺族が
事件の5年後、10年後にどのように暮らしているか
ご存知だろうか。
マスコミは通常、いじめ自殺事件の裁判が終われば取材から手を引き、
遺族の「その後」を報じることは殆どない。
私は、これまで複数のいじめ自殺事件の取材をした中でも、
この福岡の事件は発生当初から現在まで異例の長期間追いかけているため、
遺族の心身の変化を間近で見てきた。
当ブログでは今後、そのような取材で得た遺族の視点を紹介しながら、
「新」いじめ対策法のあり方を考察していく。
この国に依然として多発するいじめ問題を、
教育や司法、メディア報道の観点からどう見るか?
事件から時が経つにつれ、
亡き子への遺族の想いはどのように移り変わっていくのか?
いじめ自殺で子どもを失った経験は、遺族の人生にどんな影響を及ぼす?
自殺した子どものきょうだいが直面する問題とは?
いじめ自殺事件の当事者として、15年の月日を経験した方々だからこそ
語れる言葉がある。
不定期掲載。
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