2023年9月11日月曜日

ジャニーズ問題 メディアの自己検証に求められる「ホモフォビア」対策

 「ジャニー喜多川氏による性的虐待問題を報じるべきではないか」

某キー局内の集まり。ある出席者が、局幹部に問い質した。
中学生時代に『
光GENJIへ』(北公次著)を読んでいた私は、幹部はどう返事をするのだろうと、固唾を飲んで見守った。

「関係性があるから出来ない」
幹部はアッサリとかわし、すぐ次の話題へと移っていった。そこには、報道人としての苦悶の表情も、丁寧に説明しようとする姿勢も伺えない。報道すべきかどうかという葛藤など、とっくに捨て去っていたのだろう。
もう何年も前の話である。

ジャニーズ事務所における未成年への性的虐待問題を受け、「メディアの沈黙」にも批判が集まっている。冒頭の事例からおわかりのように、メディアによるジャニーズ事務所への忖度は、長年、当たり前のように行われてきた。

今年9月にはTBS『報道特集』が、メディアの沈黙について取り上げたが、沈黙した理由については掘り下げず、「海外の専門家」や「街の声」を登場させてお茶を濁していた。

自局のプロデューサーにでもインタビューをすれば済む話だろうし、おそらく制作スタッフもそのように切り込みたかっただろう。だが、上層部から止められたのではないか。
「会社ジャーナリズム」の限界を見た思いだった。

今後メディアは、このような事態の再発防止へ向け、自分たちが取引先の性的虐待問題に見て見ぬふりをしてきたことについて、自己検証を実施しなければならない。
その際に求められるのは、メディア内の「ホモフォビア
(同性愛嫌悪)」対策である。

これまた何年も前、私が取材していた男性間のセクハラ裁判について、某有名報道番組は、マンガチックなイラストで面白おかしく報じた。
メディアが同性愛を「ホモ」として笑いのネタにする姿勢はバラエティ番組などでも頻繁に見られ、結果的に男性の性被害を矮小化してきた。
なぜ、メディアにはホモフォビアがはびこるのだろうか。

実はホモフォビアは、軍隊やスポーツチームなど、男性中心の組織でよく見られる。
そこでは「腕力」や「支配力」、そして「女性への性欲」を持つことが『正しい男らしさ』として称賛される。このため、同性を好きになる男性や、性被害を受ける男性は、「男らしくない」として揶揄の対象となるのだ。

メディアも、まさに男性が牛耳ってきた組織である。ジャニーズ事務所における男性間の性的虐待を前にして、「人権問題」と捉える意識が欠如していたことは、想像に難くない。

ホモフォビアの排除へ向け、何が必要か。
当然ながら、男性中心主義を薄めるために、幹部職の女性を増やすことが重要だ。
それにはまず、特に上層部の社員が持つ、ジェンダーをめぐる「アンコンシャス・バイアス(偏った思い込み)を解きほぐしていかねばならない。

おびただしい数の未成年の性被害者を出した今回の事態に、メディアが「自分事」としてどこまで向き合えるか。いまこそ問われている。

 

【参考】

▶マスコミ倫理懇談会「メディアとジェンダー」(講演)

▶研修「ジェンダーのアンコンシャス・バイアスとメディア・リテラシー」

 

講演のお問い合わせ

渡辺真由子 公式サイト

http://www.mayumedia.com/



☆メディア・リテラシーとジェンダーをオンラインで学ぶ

 

 

 

 

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性的同意とメディア