性犯罪に対処するための法整備について、上川陽子法相は今年9月、法制審議会に諮問した。
焦点の1つは、性犯罪の構成要件とされてきた「暴行・脅迫」などをどう見直すか、である。私が若者たちに取材を重ねた経験からいえば、暴行や脅迫のない性暴力は、日常的に起きている。
暴行や脅迫がなくても、なぜそれらは「性暴力」と被害者に受け止められるのか。
そこに「同意」が存在しないからだ。
参考までに、私が取材した事例を『デート・レイプの実態』で紹介している。
以下に一部を抜粋:
【事例1.「料理」を目的に行ったのに】
「留学していた時、10歳年上の日本人男性と知り合いました。相手も語学勉強中で、いろいろ遊びに連れて行ってくれるお兄さんみたいな存在でした。
あるとき、『料理をご馳走してあげる』と言われて、彼の家に行ったんです。一緒に映画を見ていたら、だんだん部屋が暗くなってきて。私は……」<続きを読む>
【事例2.「映画を見る」はずが】
「2人で横になりながら部屋で映画を見ていたら、私の背後にいた彼の手が段々と体に触れてきたんです。冗談かと思っていたら本気だったらしく……」<続きを読む>
上記の被害者たちは、いずれも性行為に同意していたわけではない。
だが、映画やドラマの性的暴行シーンに見られるような「激しい抵抗」をしたわけでもない。
彼女たちにあったのは、不意打ちの性暴力に対する「精神的ショック」や「諦め」だ。
こうした被害者をどう救済するのか。法制審には、被害の実態に即した法改正を目指してもらいたい。
<参考>
『性犯罪の暴行・脅迫要件に見直しが必要な理由(法務省検討会)』
また、今回の法制審への諮問では、
「性交等又はわいせつな行為をする目的で若年者を懐柔する行為(いわゆるグルーミング行為)」に関する罪を新設することも、論点として取り上げられている。
グルーミング? なんだか懐かしい響き……
と思ったら、私がカナダに留学中の2006年、オンライン上の子どもへの性犯罪を調べていた時によく目にした言葉だった。
そう、当時カナダでは既に、child grooming が社会問題になっていたのだ。
2002年には、性犯罪を目的としてネット上で子どもと交流することを、法律で禁止した。
グルーミングのプロセスについても、海外で研究が進められている。
典型的な手口は以下のようなもの:
1.犯人はまず、子どもたちがよく使うチャットルームにアクセスする
2.標的とする子どもを見つけ出す
3.優しい言葉をかけて相手の心をつかむ
こうした手口は、日本におけるリベンジポルノや自画撮り被害でもよく見られるものだ。
「狙いやすい子ども」には一定の特徴がある。手口や対策の詳細については、複数の拙著で述べている:
『オトナのメディア・リテラシー』(渡辺真由子著、リベルタ出版)
『子どもの秘密がなくなる日~プロフ中毒ケータイ天国』(渡辺真由子著、主婦の友社)
『リベンジポルノ~性を拡散される若者たち~』(渡辺真由子著、弘文堂)