2021年5月19日水曜日

性犯罪の暴行・脅迫要件に見直しが必要な理由(法務省検討会)

法務省の「性犯罪に関する刑事法検討会」は昨年から、性犯罪をめぐる処罰のあり方について議論してきた。しかし、今年4月にとりまとめられた報告書案では、多くの論点について結論が先送りされている。

特に、性行為に対する「同意」 に関しては、委員たちが難しく考えすぎて、議論をこねくり回している印象を受けた。

性行為は、相手に「イエス」と言われたら進めればいいし、「ノー」と言われたらやめればいい。それだけの話だ。しかし現実には、相手の「ノー」を尊重しない者たちによって、強引な性行為が多発している。

そこに暴行や脅迫が存在しないことは、珍しくない。だが被害者にとっては、「同意をしていない」性行為であり、性暴力なのだ。これらを処罰対象とするために、どのような規定が必要なのかを、議論してもらいたい。

 参考までに、私が大学生たちに取材した事例を挙げよう:

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【本気でノーと言っているのに(女子)】

アユミ(仮名)は私がインタビューをしている最中、時折咳き込んでいた。体調を崩しやすいのだという。大学年生のときにはインフルエンザにかかり、高熱にうなされた。だが当時付き合っていた彼氏は、そんなときでもセックスを求めてきた。

「本当に嫌だったんです、朦朧としていたのに。だから『嫌だ』って言ったんですけど……。彼はした後に『ゴメン』って。何がゴメンだよと思いました」 

普段は男性を気遣ってノーと言いづらいだけに、女性がノーと口にする時というのは、よほど嫌な時なのだと推測される。しかし、アンケートに続々と寄せられた女子学生たちの声からは、女性のノーが尊重されていない実態が明らかになった。

「嫌だといっても聞いてくれなくて、とても不快だった。私の気持ちより自分の欲求が大事なのかと、幻滅した」

「私は人でゆっくり話をしたり、眠ったりしたいのに、手を出してくる。嫌ではないので応えるが、あまり度が過ぎるのは嫌気がさしそう」

「寝ている時に無理やり迫られた。 泣いてもやめてくれない」

「初体験のとき、そんなに好きじゃない彼氏がどうしてもというので、根負けした」

「ノーといっても本気のノーとは気づかず、エッチしようとしてきた」

「とにかくムカついた。こっちのことは何も考えてない。自分の性欲だけで迫ってきた」

「家にいたときに強引に誘われた。抵抗したが、無理やり手をまとめられた」

セックスは、合意が必要な究極の行為である。女性が本気でノーと言っているのに、男性が口先だけのポーズだと思い込んで強引にコトを遂行すれば、もはや犯罪とされるべきだ。

いくらメディアからの情報を真に受けているとはいえ、目の前の女性がノーと言っているのは単に自分を焦らすためなのか、それとも本当に嫌がっているのかは、見分けがつかないものだろうか。

初体験のときに相手のノーを汲み取れなかったサトシ(仮名)は、自戒の念を込めて言う。

「『相手もそのつもりに違いない』って男が思い込んじゃう時って、大抵、ヤリたい時なんですよね」

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