2021年4月20日火曜日

「生命(いのち)の安全教育」とユネスコ『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(比較)

文科省などは、「性暴力の防止」を目的に、幼児期から大学生以上までの発達段階に応じた教材を、初めて作成した。

性教育のあり方についての世界標準といえば、 ユネスコが発行する『国際セクシュアリティ教育ガイダンス』(2018年改訂)である。この国際ガイダンスと比較して、日本の「生命(いのち)の安全教育」はどのようなものだろうか。<幼児期・小学生>と<中学・高校生>の各段階でみてみよう。

<幼児期・小学生>
国際ガイダンスは、 新たに対応すべき重要課題の1つとして「情報通信技術(ICTs)の安全な使い方」を挙げる。早くも5歳から、インターネットやソーシャルメディアについて、利点や危険性を学ばせることを推奨している。

一方、生命(いのち)の安全教育が「SNS利用の注意点」について取り上げるのは、小学校高学年向けの教材からである。SNS絡みで犯罪被害にあう小学生の数が過去最多を更新している現状(警察庁調査)を鑑みれば、もう少し早めていいのではないか。

<中学・高校生>
生命(いのち)の安全教育は、中学生以上向けには「デートDV」や「性暴力」の問題も盛り込んでいる。これらの点については国際ガイダンスも、中学生向けに「望まない性的扱われ方」、高校生向けに「暴力的、または性的同意のない行為」の問題を理解させるよう促している。

ただし国際ガイダンスの場合、性暴力などの問題を、SNSをはじめとするメディアの「性的に露骨な情報」との関係から、子どもたちに考えさせていることが大きなポイントだ。

これは、「ネット上に氾濫する性情報や性的イメージは、多くの子ども・若者にとって最初の性教育になり得る」と、国際ガイダンスが懸念しているからに他ならない。子どもたちが1日中どっぷりネット等にハマっている、という状況は海外も同じなのだから、当然だろう。

したがって重要になるのが、メディアの性情報を読み解く「リテラシー能力」の育成である。国際ガイダンスも、改訂版における新たな学習課題として、「メディア・リテラシー」を打ち出した。

ところが生命(いのち)の安全教育ではなぜか、「性情報の影響や読み解き方」(性情報リテラシー)に関する記述は見当たらない。性暴力については取り上げつつ、その性暴力をめぐる意識や価値観を形作る存在(=性情報)への言及が、スッポリ抜け落ちているのだ。

子どもたちに「性情報のリテラシー」について教えることは、性加害が「なぜ起きるか」について、社会的な背景を考えさせることにもつながる。国が及び腰なら、お先にMAYUMEDIAカレッジで、この問題に取り組みますよ。

【参考論文】
『性情報をめぐるデジタル・シティズンシップ教育の展望』(渡辺真由子著、2020年)

 







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性的同意とメディア





 

 

 

 

 


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