2012年4月6日金曜日

いじめ自殺報道とメディア・リテラシー

テレビ朝日「はい!テレビ朝日です」公式サイトより:




「伝えたこと 伝えられなかったこと~ある記者のいじめ報道の軌跡~」

��007年8月19日放送
(*関西テレビ「報道と人権に関わるメディアリテラシー」への出演内容はこちら



【今回は一人の女性ジャーナリストのいじめ自殺に関する取材を通して、

報道するということはどういうことか、逆に、被害者や遺族が取材されるということは

どういうことかをテーマにお送りします】



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【VTR1】




5月25日、いじめ自殺で我が子を失った遺族たちが、学校の調査内容の

情報開示を求める要望書を政府、文部科学省、各政党に提出。

その中に、1998年、同級生たちに恐喝を受けた直後に自殺した古賀洵作(しゅんさく)さん

��当時16歳)の母、古賀和子さんもいる。古賀洵作(しゅんさく)さんの事件を取材したのは、当時、

テレビ局の報道記者だった渡辺真由子さん。

渡辺さんは、テレビ局を辞め、フリーになった現在も古賀さんたちの活動を

取材し続けている。いじめ自殺に関わり続ける渡辺さんの取材に同行しました。





【スタジオ1】



島本:

メディア・ジャーナリストの渡辺真由子さんは、古賀和子さんの長男、洵作(しゅんさく)さん

のいじめ自殺事件を取材し、以後9年間に渡っていじめ自殺の問題を取材しています。

その中で伝える側の報道のあり方についても考えることが多いと言います。




吉澤:

去年、いじめ自殺が続いた時に、報道の現場でも、いじめ報道はどうあるべきか、

議論になりました。取材され遺族の方々のお気持ちなど、今回改めて考えてみたいと思います。



【VTR2】




7月20日から22日 福岡で開かれた、いじめによる自殺をした

子どもたちの写真とメッセージ展。遺族たちの手作りイベントに、マスコミの取材が

殺到。遺族も取材に積極的に対応。しかし、遺族たちに報道のあり方を尋ねると

疑問を呈する声、怒りなどが出てきました。

メディア・ジャーナリスト渡辺さん自身、

「遺族は取材に積極的に答えるものだと思っていた」と、驚きます。




��998年、古賀洵作(しゅんさく)さんは、同級生たちによる恐喝を受けた直後、自殺。

高校二年生、16歳でした。

遺書はなく、我が子の死の真相を知りたいと願った和子さん、

秀樹さんの両親でしたが、学校の壁、少年法の壁に阻まれました。

一年を超える闘いの後、少年審判記録(少年調書)が開示され、初めて、

息子が追い詰められていく酷いいじめの具体的な内容がわかりました。

渡辺さんは、この事件を取材し、1999年「見えない叫び」、2000年「少年調書」という

二本のテレメンタリー作品を発表し、大きな反響を得ます。

特に、「少年調書」は、千五百枚に及ぶ調書を紹介し、幾つもの賞に輝きました。




その後、母校の高校の後輩たちに番組のテープを観てもらうと、

その感想には「被害者に肩入れしすぎている」「加害者、学校の立場も描くべきだ」という指摘が。

自分の報道のあり方に疑問を抱きます。

渡辺さんはその後、テレビ局を辞めると、カナダへ留学し、メディアリテラシーを学ぶ。




今、改めて自分の番組を観て伝えた内容を見ると・・・。

加害者や学校サイドの意見がほとんどない。

特に、学校に関しては、取材を申し入れても拒否だったため、かなり強引な取材を行っている。

その取材手法が果たしてベストな選択だったのか。

あらためて福岡県飯塚にある古賀さんの家を訪ねる渡辺さん。

取材される側の古賀さんたちは、当時、どんな想いをしていたのか?渡辺さんは尋ねていきます。

ひとつひとつの質問に丁寧に答えていく古賀さん夫妻。

モザイク処理や匿名では、痛みや実感が伝わらないと実名報道を選んだ古賀さんだったが、

その弊害は、世間の目が気になり、外で笑うこともできなくなったそうです。

マスコミは、ニュースの大小を自分たちで決め、事件の本質をほとんど伝えず、

いいとこ取りをする。ということもわかってきました。




しかし、開示された少年調書を、当時テレビ局の報道記者だった渡辺さんに託したのは、

継続的に取材をし報道をしてくれた信頼感があったからだそうです。





【スタジオ2】




吉澤:

��年前の取材のあとを訪ねて、取材される側の生の声を聞き、今、思うことは?




渡辺:

古賀さんもそうですし、遺族の方ともお会いしたのですが、皆さん仰っていたのは、

自分たちが伝えたいと思っていたことが、メディアからは伝えられていなかった。

怒りとか涙とか非常にわかりやすい部分だけをつまみ取られて伝えられていて、

論理的に説明しようとするところは省かれていました。

私自身、新人記者のころを振り返ってみても、被害者の思いをどれだけ伝えられて

いたのか反省する部分はあります。




吉澤:

渡辺さんの立場からいうと被害者の視点で物事を見すぎていた。

その反省を込めて今回改めて加害者側、学校サイドへアプローチしたわけですよね?




渡辺:

結果的には、9年前の対応となんら変わることはありませんでした。

こちらの方から「取材させて下さい」「話を聞かせて下さい」と申し込んでも、

取材拒否されるということは、報道のバランスを取りたいと思っているのに

出来ないのは悩ましい部分でありますね。




吉澤:

両方の立場を知らないと事件自体もそうですが、問題の本質が見えてこない

というのはかなり前から言われ続けていたことなのですが。




メディア・リテラシーを学んで、ジャーナリストとして今後何をどう伝えていくか

お聞かせ下さい。




渡辺:

視聴者の側にもメディアというものを評価してもらいたいし、

メディアを判断して頂いて、ご自分で選んでメディアを観てもらいたい。

そうすることによって視聴率も上がっていくような世の中になって欲しいです。

そこに必要なのはメディア・リテラシー、メディア・リテラシーを身につける

ことによってそれが可能になると思います。

これまでの現場経験、研究を生かしながら、そういったノウハウを

伝えていければいいなと思いますね。




吉澤:

我々テレビ局側からすれば、視聴率だけを狙うのではなくて、“視聴質“

それが視聴者の気持ちに合致したものであれば、テレビ局の意識も上がって

良い番組作りが出来るのではないかと思います。

今日はありがとうございました。



(*関西テレビ「報道と人権に関わるメディアリテラシー」への出演内容はこちら





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