*『報道バズ』公式サイトより
ニューヨーク在住の日本人クリエイターチームが制作したドラマ『報道バズ メディアの嘘を追いかけろ!』が、ネットで配信中だ。「やらせ報道」をはじめとする日本メディアの問題点や、女性の生き方について、海外ならではのしがらみのない視点で問いかける作品。
このたび、監督の川出真理氏からコメントのご依頼を頂き、早速全話を拝見した。
元テレビ局記者としてこの作品を見れば、大手メディア会社の社員として働くことがいかに窮屈か、いかに「タブー」ネタに足かせをはめられているか、思い当たる点は多々ある。権力機関への忖度や、会社からの人事評価を意識しながら働かざるを得ない社員記者を、私はジャーナリストとは呼ばない。私自身、社員記者時代は自分のことをジャーナリストとは、恐れ多くてとても言えなかった。
では、大手メディアから独立して晴れてジャーナリストとなれば、あるいはごく小規模なウェブメディアで働くのであれば、しがらみのない報道が可能なのだろうか。残念ながらそうとは言い切れない。ジャーナリストとして権力機関を大々的に批判すれば、執筆や講演の仕事に影響が出る。権力機関からの報復にも怯えなければならない。本作品で、ベテランのジャーナリストの女性が大手メディアを批判した顛末のエピソードは、こうした限界をよく示している。もちろん、ウェブメディアといえどもタブーに切り込めば、スポンサーが委縮し、お金が入らない。
とはいえ本作品を見る方は、「やっぱりメディアに公正中立な報道は期待できない」と諦めるのではなく、どうすればメディアがタブーに切り込めるようになるかを考えてもらいたい。クラウドファンディングで取材資金を支援したり、SNS上で応援したりするのもいいだろう。自身が現状を変える気概を持ち、メディア業界で働き始めるのも素晴らしい。
メディア・リテラシーの教材としても、本作品はお薦めである。報道倫理の形骸化やジェンダーの偏りといった、現代のメディアがはらむ問題を理解すること。それにより、メディアの発信内容を鵜呑みにせず、批判的に読み解く目が見る者に養われることを願う。
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