2015年1月6日火曜日

【新春考】安倍政権にみる「性」と「人権」の行方



「性的少数者について、人権問題として取り組まなくてよい」との一文を目にした時は唖然とした。NPO法人「レインボープライド愛媛」が今回の総選挙を機に行なったアンケートに対する、自民党の答えだ。同性愛や性同一性障害といった性の多様性に配慮することは、当事者を差別や偏見から守るために必要ではないのか。引き続き政権を担うことになった自民党に残された課題を、「性」と「人権」の観点から検討する。

 性的少数者の問題の中でも、我が国に特徴的なのは、同性間の結婚を認めていないことだろう。同性婚は、海外では欧米を中心に10ヵ国以上で合法化されている。日本でも同性愛の恋人同士が式を挙げることはあるが、法的な保証は与えられていない。自民党は上記のアンケートで、「結婚は異性間のものであるべきで、同性婚の制度化は特に必要ない」と回答している。

 私はカナダが同性婚を合法化した2005年当時、現地に暮らす日本人の同性愛者の人々を取材した。
 
「この国では、セクシュアリティの違いは身長や年齢の違いぐらいに捉えられているから、カミングアウトしても拒絶されない安心感がある」

「皆が同じように生きなきゃいけないって思われている日本では、同性愛者は気持ち悪いと思われる。怖くてとても言えません」
と、わざわざ海を渡った理由を彼らは語る。カナダに移住した日本人同性愛者は、数百人規模でいると見られた。日本が同性愛者の「権利」と「自由」を整えなければ、ただでさえ少子化のこの国で、人材流出は止まらないだろう。



他にも、アニメや漫画を違法としない児童ポルノ問題性教育バッシングなど、自民党の「性」と「人権」意識をめぐる懸念材料は幾つもある。ちなみに安倍首相は、踏み込んだ性教育を非難する自民党プロジェクトチームの座長でもあった。この国を一定の方向にもっていくために、世論に影響を与えるマスコミと子どもに影響を与える教育を抑える有効性も、自民党はよく理解している。それらはNHK経営委員の選定や、教育改革の推進という形で、着々と実行に移されている。この政権に今後も我々の暮らしを委ねて本当にいいのか、「性」と「人権」問題への対応を注視することが必要だ。

初出:Japan In-depth