しばらくスイスに滞在しており、片道16時間のフライトでヘロヘロになって帰国したが、ジャパンのあなたはお元気だろうか(画像は、雲の合間からついに姿を現したマッターホルン)。
【児童ポルノ禁止法は、性的ディープフェイクにも適用可能】
さて、生成AI(人工知能)を悪用し、実在する子ども等を性的に加工して創作した画像や動画、いわゆる「性的ディープフェイク」が世界的に深刻化している。
各国では法規制が進むが、日本は2025年5月に成立させたAI法(人工知能関連技術の研究開発および活用の推進に関する法律)で、直接的な規制を盛り込まなかった。
児童を保護する法律として、日本には既に児童ポルノ禁止法が存在する。だが、AIによる創作物である性的ディープフェイクに対しては、処罰が困難との声があった。
実在しない子どもを性的に描くマンガやアニメ、ゲーム等の創作物(「創作児童ポルノ」)を、同法は処罰の対象外としている、とみられてきたためである。
しかしながら私の研究によれば、児童ポルノ禁止法も現行の枠組みのまま、創作児童ポルノ規制にも適用が可能である。その実現は、同法の運用次第であると考えられる。
もっとも、判例は構成要件に「実在の児童」であることを要すると解釈している等の理由から、運用の拡張には困難が伴う可能性もある。
その場合は同法を改正することにより、犯罪の構成要件に「実在しない児童」も含めるとの選択肢もあり得る。
【規制反対の「トライアングル連携」とは?】
AI時代のいま、わが国における児童ポルノ規制に必要なのは、視点の変革である。
日本では、創作児童ポルノ規制をめぐる立法過程の議論や学説において、子どもの人権よりも「表現の自由」を優先させる視点が支配的であることが、本研究で明らかになった。
その視点は立法関係者、業界団体、学説の「トライアングル連携」によって維持され、「規制反対ありき」との概念の中で議論が行われてきた。一方、国際条約では……⇒詳細
☆本研究の概要版はこちら:
渡辺真由子(2025)「AI時代の性的ディープフェイクと児童ポルノ禁止法」『メディアと人権ジャーナル』Vol.2 No.1
なお、研究の全体版の一部については、noteで連載を開始している。
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■渡辺真由子 公式サイト