なぜ、子どもの性被害は増える一方なのか。その背後に何があるのか。
前回述べたように、今月は日本が議長国となってジェンダー問題を話し合う、「G7男女共同参画・女性活躍担当大臣会合」が開催される。
これを機に「子どもの性と国際人権」への理解が深まるよう、 以前に週刊誌『AERA』でインタビューにお答えした内容を初公開しよう。
<日本の性・暴力表現は基準があいまい。「世界基準」へ、作り手が変わらねば>
Q.クールジャパンと称される日本のマンガやアニメについて、表現に関する日本の常識と、海外での常識はかなり違うのか
A.例えば日本で人気のマンガ「ワンピース」も、欧米では流血シーンでの血が消されていたり、ヒロインのミニスカートが、ひざ下の丈になっていたりする。「ドラえもん」のしずかちゃんが入浴するシーンでは、しずかちゃんが水着を着ていたり。
Q.日本の性表現や暴力表現の基準は、他の先進国に比べると緩いのか
A.日本は基準があいまいだ。放送法や民放連(日本民間放送連盟)が放送の基準を設けているが、具体的に何をやってはいけないのかということは、あまり書かれていない。例えば民放連が定める性表現の基準のうちの一つに「性に関する事柄は、視聴者に困惑・嫌悪の感じを抱かせないように注意する」とあるが、どこまでの表現が、困惑と嫌悪の感じを抱かせないかは、難しい。
日本だと、結局のところ、性的な部位の映り方が問題になる。多少、性的な仕草をしていても、性器が強調されていないなら、ある程度着衣をしているなら、児童ポルノではないと判断されることもある。
Q.では、性表現や暴力表現について、メディア規制を厳しくしている国と日本とだと、何が大きく違うのか
A.創作物を規制しているかどうかだ。イギリスやフランスだと、子どもを性的に虐待、搾取する表現を含む創作物の所有などを禁止しているが、日本だと、アニメやゲームなどに実在の子どもが登場しなければOK。もちろん日本での性表現の基準をクリアしなくてはいけないが、実は、日本は国連から何度も、アニメやゲームにおける女性や子どもへの性表現が人権を侵害していると、勧告を受けている。でも改善していない。
Q.人権意識の高い社会にするために、まず何が必要か
A.メディアにおける人権侵害の表現に、規制を設ける必要もあると思うが、まずはメディアの作り手が変わっていくといい。どの表現が人権侵害になりうるのか敏感になり、人権を侵害するようなコンテンツを作ってはいけないという意識を、作り手が持つべきだ。
(『AERA』2016年1月18日号、朝日新聞出版/一部修正)
------------------------------------------
▶このブログの更新チェックが面倒なあなたはこちら↓
■渡辺真由子 公式サイト