2015年6月15日月曜日

「性情報リテラシー」とは何か

「性情報リテラシー」とは、
私が2012年に発案し、提唱している新たな知の分野である。

性情報とメディア・リテラシーを掛け合わせたもの。
すなわち、
“メディアが発信する「性に関する情報」を
批判的に読み解く能力”
を指す。

この性情報リテラシーについて、最近は
性教育はもちろんのこと、デートDVやジェンダーの観点からも
関心をお寄せ頂くことが増えてきた。

そこで、
性情報リテラシーがいま必要とされる背景を
改めて解説しよう:


【なぜいま「性情報リテラシー」なのか】


「日本人の性生活満足度は15%で、世界最下位」
コンドーム・メーカーのデュレックス社が2007年、世界26ヵ国を対象に行なった衝撃の調査結果である。日本人の実に8割以上が、配偶者や恋人との性的コミュニケーションに不満を抱いている実態が明らかになった。

この状況はいまに始まったことではない。さらに遡ること8年の1999年、NHKが日本の40歳代から60歳代の中高年カップルに実施した調査によると、性生活に満足している割合は男性が約8割に上るのに対し、女性は約6割に過ぎない。性生活を「快楽」だとする割合も、男性は4割だが女性は1割のみ。中高年の女性と男性の間では、性生活をめぐる感じ方のズレが広がりつつある。人生のあらゆる面でベテランの域に達する彼ら彼女らが、なぜお粗末な性的コミュニケーションに甘んじなければならないのか。これでは熟年離婚が増えるのも無理はない。

AV、ネットのアダルトサイト、美少女ゲームにエロ漫画……。性情報を発信する「性的メディア」が氾濫するこの国で、性をめぐるコミュニケーションが貧弱化しているのは何故か。元来、性交の方法は、親も学校もまともに教えてくれるものではない。人々は性交に関する実用的な情報について、こうした性的メディアをいわば「教科書」に学んできた。しかし、異性に関して性的メディアが発信する情報と、現実の異性の気持ちには、実は深い溝がある。ここが、ズレを引き起こす要因ではないか。

メディアの情報を鵜呑みにせず、自分の頭で判断する能力を「メディア・リテラシー」という。もしかしたら日本人の性生活には、性情報に対するリテラシーが足りないのかもしれない。中高年の男女の性生活でさえこのような実態ならば、性行為を始めて間もない若者たちはどうなのだろう。現在20歳ぐらいの若者たちが生まれたのは1990年代前半。小学生の頃には、インターネットや携帯電話の登場による「IT革命」に遭遇した世代だ。若者を取り囲む性的メディア環境は急速に進化している。何よりネットの登場で、未成年でも性情報にアクセスし易くなったことの意味は大きい。

いまどきの若者たちはどんな性的メディアを見て、どんな性生活を送っているのだろうか。やはりズレはあるのか。昨今の男子は恋愛に受け身な「草食系」、女子は積極的な「肉食系」とメディアにラベル付けされているが、こと性生活に関しては本当にそうなのか。

この問いを検証するため、筆者は東京都内の複数の大学に通う2年生から4年生の男女計141人を対象に、性をめぐる様々な事柄についてアンケート調査を行なった。さらにそこから8人の男女を抽出し、個別にインタビュー取材を重ねた。8人は全て、高偏差値大学に通う4年生。まさにこれから、日本をリードする大企業で活躍しようとする人々だ。こうした人材は、どのような性意識を持ったまま社会へと出ていくのか。彼ら彼女らが性的メディアからどういったメッセージを受け止め、それらを自分の性行動にどう反映させているかを分析する。

また、そもそも現代のメディアに浸透する「性」の価値観は、いつ頃生まれ、どのように広がっていったのか。この点についても、戦前からの雑誌を仔細に検証する。性的メディアのネット版が増えようとも、雑誌は最も身近な性の情報源として昔から幅広い年齢層に手に取られ、時代の風俗を映し出してきたからだ。

もちろんあなた自身の性生活も、性的メディアを目にしたことがあるのであれば、その影響と無縁ではいられない。ご一緒に、「性情報リテラシー」を探求する旅に出かけましょう。

『性情報リテラシー』(渡辺真由子著)まえがきに加筆修正

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