*いじめの傍観者、被害者、加害者へ向けたメッセージの完結編。
出典は拙著 『大人が知らない ネットいじめの真実』。
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>1.友人を守るために >2.いじめられている人へ
3.いじめている人へ
誰かをいじめているあなた。「いじめはいけません」と学校で散々習っただろうから、自分がやっていることは悪いことだと、頭ではわかっているはずだ。それでもいじめてしまうのは、なぜなのだろうか。
「あいつはウザいから」「キモいから」、いじめてもいいんだと思うかもしれない。だがそれは、あなたの主観による勝手な判断だ。その人の親は、その人のことをウザいなんて思っていない。赤ん坊の頃から大切に育ててきた、「愛しい」存在だ。
その人は、あなたにウザいと思われるためにそういう言動をとっているわけではない。「ウザい」と思い込むことで、あなたは自分のいじめ行為を正当化したいのだろう。だが、どんな外見や性格も、その人の個性に過ぎない。だから、いじめる理由にはならないのだ。そもそも人間には誰にも、他人をいじめる権利がない。
例えば誰かの性格のある部分を、あなたは「嫌だ」と思うとする。もしその性格が、将来犯罪行為につながりかねないような問題のあるものだったら、先生や親が指導するだろう。あなたがでしゃばる必要はない。もし、その性格のせいでその人とはどうしても仲良くできないというのなら、口頭で柔らかく注意してみよう。でも、性格を変えるかどうかは、あくまでその人が決めることだ。あなたの思い通りにその人が変わってくれなかったからといって、仲間外れにしたりネットに悪口を書き込んだりしてはいけない。「注意」と「制裁」は別ものだ。制裁は「いじめ」であり、あなたにそんなことをする権利はない。
人間は一人一人違って当たり前。自分とは違うその人を認め、その人にもあなたを認めてもらおう。
いじめ行為は、あなたにどんな感情をもたらすだろうか。
人が苦しむのを見ると面白い? 気分がスカッとする?
そんなふうに思うのであれば、あなたの心は、何らかの不満を抱えている。あなたは、いじめをすることによって相手よりも自分が上だと優越感に浸ったり、ストレスを発散したりしている。裏返せば、それだけ自分に自信がなく、ストレスを溜めているということだ。
そのストレスの原因は何だろう。自分の心に問いかけてみて欲しい。親などの身近な大人に愛されている実感はあるだろうか。「いい子」でいることに疲れていないか。誰かに嫌な目に遭わされていないか。
そう、いじめをしてしまうあなたも、実は被害者なのである。ストレスに押しつぶされそうになっている現在の環境から抜け出す方法を、ここで考えよう。
まず、あなたがいくら辛くても、他人をいじめていいわけはない。そのいじめ行為が一時的なものであったとしても、相手の心に一生にわたる傷を残す可能性がある。いじめを受けている人は勉強が手につかなくなり、成績が落ちる。食欲がわかない、眠れない、うつ状態になる、といった症状に苦しむ。ひどいときは不登校になったり、転校をしたりせざるを得なくなる。最悪の場合は命を絶つかもしれない。
あなたがいじめを止めても、その人は簡単には回復しない。一時期受けたいじめのせいで対人恐怖や人間不信に陥り、就職してもうまく人間関係を築けず、引きこもりになってしまうこともある。あなたが軽い冗談のつもりでやったいじめが、その人の人生を狂わせるかもしれないのだ。あなたに責任がとれるのだろうか。
さらに最近は、過去にいじめられた経験を持つ少年が、無差別殺人などに手を染めるケースも発生している。いじめられた恨みは、それほど深いのだ。
あなたの辛さは、あなた自身と、その原因を作った人、身近な大人とで解決していく必要がある。全く関係ない他人を巻き込んで、ムシャクシャする気持ちのはけ口にしてはならない。
そして、周りに信頼できる大人がいるか見渡してみよう。あなたは親とうまくいっておらず、「親は自分のことをわかってくれない」と悩んでいるかもしれない。そんなときは、思い切って親にその思いをぶつけてみる。口に出して言ってみる。親だって、あなたが何を考えているのかよくわからなくて、上手に接することが出来ずにいるのかもしれないのだ。それでも改善されないのなら、先生や身近な大人に相談してみよう。大人たちの話し合いで解決する問題もあるし、状況次第では、専門機関の手も借りるかもしれない。
親以外の人から嫌な目に遭ったときは、出来るだけ親に伝えよう。遠慮することはない。親はいつだって、あなたに何でも打ち明けてほしいと思っている。
親に言う心の準備がまだ整っていないのであれば、前項「いじめられている人へ」で紹介したように、電話相談やネットで気持ちを吐き出してみるといい。誰にも言えない悩みでも、例えばブログなどに書くことで、心の中が整理される。相談に乗ってくれる人も現れるかもしれない。
いじめ行為の重さに気づいたら、もう自分を責めるのは止そう。誰かを傷付けたい、という心があなたに育ったのは、あなたに辛い思いをさせた大人の責任だ。いじめっ子というレッテルを貼られた者を大人はただ叱り付けるだけで、その悩みに気づこうとしない。だからこそ、声を上げよう。いじめをしてしまう自分の心の奥にある淋しさや苦しさを、誰かに伝えよう。
新たに誰かをいじめる前に、あなたは、救済されねばならない。
>1.友人を守るために >2.いじめられている人へ
出典:
渡辺真由子 著
『大人が知らない ネットいじめの真実』
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