ご報告が遅れたが、大阪市の男子中学生が不登校になっていた事案について、市の第三者委員会が今年10月に調査報告書を公表し、いじめが原因と認定した。
拙著『大人が知らない ネットいじめの真実』の内容も参照されている。
報告書によると男子生徒は、自身になりすましたSNSアカウントを同級生に作られ、女子生徒にわいせつな画像を送られるなどのいじめを受けていた。
調査の実施にあたり第三者委員会は、この事案が「SNSが絡む性暴力」であることに着眼したという。
「インターネットを使う性的攻撃の特徴」を解説した拙著を引用しつつ、報告書は下記のように指摘した:
″ SNS を利用する,性的ないじめ行為は,被害者にとっては,強く,かつ短時間で精神的に追い詰められる危険性を有していることを強く認識する必要がある。″(5-6頁)
また、「SNS 上でのトラブルを防止するための指導体制の強化」として、学校でのネット・リテラシー教育の必要性が提言され、拙著が参照されている(64-65頁)。
なりすましいじめや性的いじめの問題については、先日の講演でもお話したところだ。
なお『大人が知らない ネットいじめの真実』は、文科省「学校における自殺予防教育導入の手引」 でも、推薦図書に挙げられている(63頁)。
拙著をめぐるこうした動きは、手放しでは歓迎できない。
つまるところ、子どものいじめや自殺の状況が、依然として改善されていないことを示すからである。
拙著のみならず、いじめや性暴力に関する知見は、世の中に積みあがっている。
ネットいじめの認知件数が右肩上がりを続けるいまこそ、それらの知見を確実に、教育政策へと反映していかねばならない。