2012年6月8日金曜日

『性情報リテラシー』3.メディア情報に揺れる初体験

メッセージ 
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(新聞連載) 



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サトシ(仮名・23歳)は有名私立大学の文学部4年生。北陸出身で色白、小柄で目が細く、どことなく歌舞伎の女形を連想させる。内定先は財閥系の商社。就職活動で身につけたと思われる物腰は礼儀正しい。「初体験は中3です」と言われたときは少々意外に感じた。



サトシには現在、同じ大学に交際1年半になる彼女がいるが、それまでは短期間の関係のみを繰り返してきた。その1人目となる彼女が出来たのが、地元の公立中学3年生のときだったという。



小学生の頃に成人雑誌、中学生になってからはAVやネットのアダルトサイトを愛用していたサトシは、早く実際に性行為をしてみたいと思っていた。親がいない間に彼女を家へ呼び、迫った。だが、相手はどうも乗り気ではない。



「はっきり嫌とは言わなかったけど、『うーん、うーん』みたいな感じで。『はい、しましょう』ではなかったですね。でも僕は、やりたい盛りだったので、相手の気持ちまで頭が回らなかったんです」



 
結局、半ば強引に遂行した。彼女はその後、去っていった。初体験用にサトシが参考にしたのは恋愛マニュアル雑誌。「彼女が部屋に来るのは期待度大」「女は恥ずかしがるフリをするから、男が大胆に行け」などと書いてあった。仲間内で最も初体験が早かったサトシは、それらの情報を信じるしかなかったという。



「友達は未経験だから聞けないし、親や学校も教えないので、メディアの存在が大きかったんです。自分に体験がないと、メディアからの情報が嘘か本当か判断出来ない。判断基準がないし、判断する余裕もなかったですね。あのときの彼女には、身勝手で申し訳なかったと思います」



 前出のキョウコ(21)が初めて男子と付き合ったのは、高校2年生のとき。他校の1年先輩だった。1ヵ月も経たない時期にドライブに誘われ、食事に行くのかな、と乗り込んだ。すると車はラブホテル街へ。嫌悪感がわき起こったが、同時にある考えが背中を押した。



「私も結局、まあいいやと思ったんですよね。もう高2なんだから、そろそろHしないと、って気分もあったし」



 キョウコの学校では携帯の出会い系サイトが流行り、そこで知り合った相手と初体験を済ませている友人が多かった。さらに、ファッション雑誌の性特集のアンケートでは、初体験年齢の1位が「15歳」と紹介されていた。



「そういう話を聞くと焦るというか、私も早くHしなきゃいけないのかな、と思うようになりました」



 高校生の性交経験率は30年前に比べ、男子が10%から27%へ、女子が6%から30%へと大きく上昇した(日本性教育協会、2005)。年齢が早いほど、参考に出来る情報はメディアくらいしかない。同年代の性交経験者の情報がメディアを通して与えられることも、プレッシャーとなる。子どもたちが初体験に直面するとき、その方法や決断は、メディアに大きく左右されている。





続く



【参考文献】
最新刊!性教育とメディア・リテラシー
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『性情報リテラシー』


・子ども達はメディアの性情報にどのように接し、
 自らの性行動・性意識にどう反映させているのか?

・「性的有害情報対策」としての
 リテラシー教育はどうあるべきか? 



 




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