ほとんどのSNSには「自己紹介」機能がある。プロフィール欄に画像や文章を載せ、自分をアピールするのだ。自己紹介用の画像として大半の子どもが使うのは、携帯やスマホのカメラで撮影した自分の顔写真だ。顔の一部を隠す用心深い子もいるが、多くは素顔をそのまま公開している。写真シール機(通称「プリクラ」)で友達と一緒に撮った写真も目立つ。最近のプリクラは、撮影した写真をシールにするだけでなく、画像にデジタル化して自分の携帯に保存出来る。ある女子中学生は、「友達も私の顔をSNSに普通に載せてるから、お互い特に気にしてない。いちいち許可取る感じじゃない」と話す。
プロフィール欄の項目はSNSにより様々だが、主に「名前」「居住地」「誕生日」「職業」など。特定されないよう大まかに記入すれば良いものを、子どもは
簡単に個人情報をさらす。「名前」の欄に本名、「職業」の欄に学校名と学籍番号など、尋ねられている範囲よりも詳細な情報を出してしまうのだ。自ら進んで、である。これでは、サービス提供側が個人情報を出させないよう項目を工夫しても、あまり意味がない。
文部科学省の調査(2010)
では、SNSなどのコミュニティサイトに見られる不適切な書き込みのうち、実に9割近くが中高生によるものだった。不適切な内容別で最も多かったのが個人情報の公開で、全体の60%を占める。このうち、所属先の学校・団体名を明かしていた書き込みが66%に達した。
SNSにおけるもう一つの主要な機能が「実況中継」である。いま何をしている、誰といる、何を考えている等を、文章や画像で投稿するのだ。「これから渋谷でカラオケ」「まじムカつくんだけど」「部活終わった」などと1日に数回、多い子は10回以上書く。詳しい状況説明が抜けているので、あかの他人が読んでもよくわからない。だが、仲間内ではこれで通用する。「きのうカラオケ行ったの?」など、SNSに書いた内容が友達との会話のネタになるのだ。
「友達のSNSをこまめにチェックするから、結構話題がはずむんです。直接聞いて、もし教えてくれなかったら、ちょっと気まずいんで」と、ある女子中学生が打ち明
ける。KY(空気が読めない)と見なされることを恐れ「臆病化」する子どもたちの間では、「きのう何してた?」と相手に直接聞く形のコミュニケーションは、省略されつつある。
画像の投稿内容も赤裸々だ。「学校のトイレで仲間とヤンキー座り」、「自習中の教室でプリンを食べる」、「体育館でジャージ姿」などなど。携帯持ち込み禁止のはずの学校で、いかに子どもが学校内でも携帯カメラを多用しているかがわかる。自分の顔も友達の顔もそのまま大量に出す無邪気さには、唖然とするほどだ。「散らかっている自分の部屋」「彼氏といちゃいちゃ」など、かなりプライベートな画像も目につく。15歳の女子中学生は、彼氏とシャワーを浴びた後の2人の裸(肩から上)を公開していた。
ある女子高校生は、教室でいじめられているらしい男子生徒の後ろ姿を撮影してSNSに載せ、「噂のアイツだよね」とコメントを添えている。他人の画像を公の場にさらし、皆で笑い合うのは立派なネットいじめだ。だが彼女たちは、内輪の友人と写真付きの交換日記をしている感覚なのだろう。
<続く:不定期連載>
初出:月刊『子どもの文化』2014年5月号
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